リトル・ダッキー

『ダッキー構想中』
 
  浴室で、あなたとダッキーが、なにやら小声で話し合っています。
「じゃ、こういうのどう?私がおならするから、ダッキーが『臭いじゃないかよー』っていうの」
「おならネタはもう前にやったじゃん。何度も」
「そっかー。じゃ、またカメのマイキーとか呼ぶ?」
「え?やだよー。あいつ、日本人なのに、英語しかしゃべらないんだもん」
「え?マイキーって、日本人だったの?」
 
  リトル・ダッキーは、小さなあひるのおもちゃです。
  今日は風呂場であなたと『マイクロ小説』の次回作のネタを話し合っているようです。
 
「じゃ、さ。私が悲劇の主人公で、風呂場に閉じ込められてて、ダッキーが助けに来るってのはどう?」
「ヒーローものかぁ……」
「新しいでしょ?ね?」
「そういえば、このマイクロ小説って、裸でズッコケるとか、そんなんばっかだからなぁ」
「そうよ、ここらで新しいイメージを読者に提供しないと」
「うーん…」
「ずーっと裸でコケてばかりはいられないわよ」
「おーし、じゃぁ、いっちょやるか!」
「がんばるぞー、おー」
「おー」
 
「じゃ、浴槽をお城みたいに改造して……」
「レンガで囲んで、ツタを這わせたりしたら……」
 
  その夜、次回作の構想で盛り上がったダッキーとあなたは、遅くまで風呂場で話し込んでいたので、翌日すっかり風邪を引いてしまいました。
 

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