リトル・ダッキー

『ダッキーと金の歯ブラシ』

 リトル・ダッキーはちいさなあひるのおもちゃです。
  ある日、ダッキーが風呂の排水溝に溜まった大量の毛を取り除こうとしていると、見知らぬおじいさんが湯船からザブリと浮かび上がり、こう尋ねました。
 
「君が落とした歯ブラシは、金の歯ブラシかね?銀の歯ブラシかね?」
 
  排水溝の周りにベッタリとこびりついた毛を剥がしていたダッキーは、突然現れたこのずぶぬれの老人を胡散臭げにジロリと一瞥し、何もなかったかのように掃除を続けました。
 
「君が落とした歯ブラシは、金の歯ブラシかね?銀の歯ブラシかね?」
  と、またおじいさんが尋ねましたが、ダッキーはもう振り返りもしません。
 
  しばらくおじいさんは赤い顔をして立っていましたが、やがてまた浴槽の底に戻っていきました。

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