リトル・ダッキー

『ささやかな発見』

 リトル・ダッキーはちいさなあひるのおもちゃです。
  お風呂に入って、あなたはダッキーに話しかけました。

「ダッキー。今日会社で嫌な事があったの。聞いてくれる?」
「あぁ、いいよ」ダッキーは湯船に漂いながら答えました。
「あのね、私の後輩が私の事を影で『お局お婆』って呼ぶらしいの。で、その事を課長がわざわざ私にメールしてきたの」
「なるほど」ダッキーはパタパタと水しぶきを上げながら軽く羽根を振りました。
「別に私はその後輩を嫌いじゃないし、その子も話してるとホントに良い感じの人なのよ。でも、私の事をそんな風に影で呼んでいるのはショックだわ」
「そうだね」そう言うと、ダッキーはあなたに微笑んでから少し考えました。
「課長さんはその後輩と仲良さそうにしてるかい?」
「いいえ。むしろ、会社ではその後輩とあまり口もきかないわよ」
「分かったよ」とダッキーはポンと手を…いや、羽根を叩きました。

「その課長は君の後輩とデキてるな」

 驚く私をチラッと見て、ダッキーは続けてこう言いました。
「で、最近課長さんはその後輩とうまくいってないんだよ。だからその後輩を困らせようと思って、そんな根も葉もない噂を立てているんだよ」
「でも、課長は結婚して子供もいるのよ」とあなたが反論すると、
「浮気男の社内恋愛か。良くある話だ」と言って、ダッキーは一瞬遠い目をしました。

 あなたは、まだちょっと納得できませんでしたが、そう言われてみればなんとなく納得できる出来事もあったので、そんなものなのかなとも思いました。
「あの課長と後輩とがねぇ」
  そう呟く私をなぐさめるかのように、ダッキーはポンポンと私の腕に触れました。

 あなたは、このささやかな発見を会社のみんなに明日メールで広めようと思いました。


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