【空想幾何学小説】
作 ・ 久慈 誠

『闘牛場』

その闘牛場に牛はいなかった。
牛のいない闘牛場には、当然闘牛士もいない。
だから、闘牛士が牛と闘うのを観に来る観客もいない。
闘牛も闘牛士も闘牛を観る観客もいなくても、そこは確かに闘牛場だということを皆知っていたが、なぜその闘牛場に牛も闘牛士も客もいないのかは誰も知らなかった。


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