【空想幾何学小説】
作 ・ 久慈 誠

『箱の中の箱と箱』

箱の中に、箱が入ってます。箱に入れられた箱と、箱を入れた箱。
箱の中に入れた箱にも、箱が入っています。箱に入れた箱に入っている箱、箱を入れて箱に入ってる箱と、箱を入れた箱が入っている箱。
箱の中には、箱と一緒に筒も入っています。箱に入れた箱の隣に並んだ筒と、箱に入れた箱と隣り合わせの箱と、箱と筒を入れた箱。箱に入れた箱の隣の筒は、箱に入れた箱に箱が入っていることを知りません。箱に入れた箱に入った箱も、箱に入れた箱の中の筒に入っている箱の存在に気づいていません。だからもちろん、箱に箱を入れて箱に収めたあなたが箱の隙間に筒を入れたときに筒に箱が入っていたことに気づかず、箱を入れた箱を入れた箱の中の箱の隣の筒の中に箱が入っていることを誰も知らないのも当然のことです。


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