リトル・ダッキー
『リトル・ダッキー不在』
作者が浴室でウィスキーの瓶を抱えてふて寝していると、コツコツと浴室の扉を叩く音が聞こえました。
「ダッキー!ダッキーか?」
飛び起きて扉を開きましたが、そこには誰もいませんでした。
ダッキーがいなくなって、しばらく経ちます。
作者は『リトル・ダッキー』の続きが書けず、奥さんからも新作をせがまれて、どうして良いか分からずに酒浸りの日々を送っています。
「ダッキー、どこへ行ったんだよぅ…」
「ここだよ」
驚いて声のした方を見ると、あぐらをかいた足の隙間から、ダッキーが顔を覗かせてこっちを見ていました。
「ダ、ダッキー」
思わず作者の目に光るものが浮かびます。
「えへへ」
照れ笑いするダッキーも、少し涙ぐんでいるようです。
「もぅー、今度いなくなったら、あの世行きだぞー」と、冗談めかして作者が言いましたが、目は笑っていませんでした。
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