「なんにもないね」
「そうだね、なにもないね」
ダッキーとあなたは、重い雰囲気の中、沈鬱な口調で会話をしています。
「君がこないだ、話しかけたりしたからじゃないの?」とダッキーが言うと、あなたは、黙ってしょんぼりとうつむいてしまいました。
「ま、そんなこともないんだろうけど…」
いつもは強気なあなたが言い返してこないので、ダッキーはあわてて取り繕おうとしましたが、風呂場には居心地の悪い沈黙が流れました。
しばらくして、浴室にすすり泣く声が聞こえてきました。
「窯、買ったんだってさ。陶芸窯」ダッキーが思い切ったように言うと、あなたは
――何を言っているのか分からない――という風に顔を上げ、ダッキーを見つめました。
「陶芸彫刻を本格的に再開するんだって。『作者』が…」
「そう……陶芸ね……」
二人とも黙ったまま、それぞれ何かを考えているようでした。
「終わらないよね…」
「終わらないさ!」
ダッキーは思わず大声を上げました。
そして、浴室は更に重たい沈黙に包まれました。