リトル・ダッキー
『水中カメラ』
「海、良かったよぉ。海楽しかったよぉ。今度一緒に行こうか?」
風呂場で浮かれるあなたを、ダッキーは冷ややかな目で見つめています。
「だって、せっかくの水中カメラなんだから、水の中で使いたいじゃない」
どうやらあなたは、撮り残したフィルムを使い切るために、風呂場にカメラを持ってきたようです。
「ほら、ダッキー。こっち見てー」
カメラを覗きながら、中腰になろうとしたあなたは、ゴツンと思い切り壁にお尻をぶつけ、その反動で頭からドボンとお湯に突っ込んでしまいました。
浴槽で逆立ち状態になったあなたは、ゴフゴフとお湯を飲み、ゴンゴン頭を打ちつけましたが、なんとか脱出に成功しました。
普段はよほどの失敗でも全く気にしないあなたが、珍しく暗く打ち沈んだ表情のままぼんやりと握りしめたカメラを見つめているので、ダッキーも心配になり、あなたの顔を覗き込みました。 「私、自分の裸を撮っちゃったみたい…」
夏の思い出。現像されることはなさそうです。
(c)TOMAKI