リトル・ダッキー

『再会』
 
  今日も同じデスクで、いつものように煩わしい仕事で精神をすり減らしていると、モニターの後ろ側からダッキーが現れました。
「よぅ、どうなん?最近」
「どうなんって言われても…」
  マウスを握りしめたまま僕が口ごもっていると、ペタペタと派手な足音を立てながらダッキーは机の上に散乱している書類やメモをクチバシで突っついたり、ひっくり返したりし始めました。
  リトル・ダッキーは小さなあひるのおもちゃです。
  以前、僕が発行している「マイクロ小説」というメールマガジンに主人公として登場していました。
 
「忙しいのか?」
  資料の山から見つけたネズミのキャラクターを興味深げに眺めながら、ダッキーが聞いてきました。
「うん、まぁ…」
「書いてないのか?その後」
「え、何?小説は…なかなか。ずっと時間が…」
「書けよ、そろそろ」
  ネズミの絵から目をそらさずに、ぶっきらぼうな調子で話し掛けてくるダッキーでしたが、その事を言うためにわざわざ来てくれたのだということは分かりました。
 
「待ってるやつ、いると思うぞ」
「え?小説?いるかな…こんな、」
「いるよ!」
  大声を上げたので、隣の同僚がこっちを見ました。
  それに気付いて、ダッキーは少し声を落としてこう続けました。
「…お前の奥さんがな」
 
  なんとなく、ダッキーの続きを書いてみようかなと思いました。


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