ﾘﾄﾙ･ﾀﾞｯｷｰ
『仲直り』
リトル・ダッキーはちいさなあひるのおもちゃです。
ダッキーは、沈んだ気分で浴槽に浮かんでいました。
そこへ、あなたが入ってきました。
ダッキーは、あなたが何も話し掛けてこないので、悲しくなりました。
あなたも、ダッキーが目を合わせないで横を向いているので、悲しくなりました。
あなたは、黙って体を洗いました。
ダッキーは、それを黙って見つめました。
あなたが体を流した時、チラッとお互いの目が合いましたが、二人とも何も言いませんでした。
あなたは、見えないように涙を拭きました。
でも、ダッキーはその事に気付きませんでした。
なぜなら、ダッキーの目も涙でいっぱいだったからです。
あなたは浴槽に背を向けて、無駄毛の処理を始めました。
ダッキーはあなたの背中に向かって小さな声で、でもはっきりとこう言いました。
「ごめんね」
それを聞いたあなたも、「私の方こそ、ごめんね」と、足にシェービングクリームを塗ったまま言いました。
「ごめんね」「ごめんね」と言い合いながら、二人は裸のまま泣きながら抱き合いました。
あなたの手には、しっかりと無駄毛処理用の安全かみそりが握りしめられていました。
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