「課長と話す時に、どうしても課長の髪の生え際に目が行ってしまうの」
「そんなにひどいのかい?」
「そんなにひどいの」と私が答えると、ダッキーは辺りを気にするように、声をひそめてこう聞きました。
「やっぱり…差したあと、腫れてる?」
私もつられて声をひそめて、
「血がにじんでる時もあるわ」と答えました。
ダッキーとあなたは、そのまま黙って見詰め合いました。
しばらくそうしていると笑いをかみ殺したダッキーが、プルプルと肩を震わせ始めました。
それを見たあなたも、つられてブフッッと吹き出してしまいました。
そして、二人はウヒョヒョヒョヒョヒョと息の続く限り、腹筋が張り裂けるほど笑い続けました。
「これでようやく、課長と話す時でも髪の生え際を気にせずにすむわ」
あなたはちょっとだけダッキーに感謝しました。